Q & A

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法定後見制度

Q1 認知症なのかはっきりしませんが、子供の私は遠くに住んでいるため、近くの人に何かしらお手伝いをしてほしいです。
高齢者の方の生活不安は「健康」と「生活費」と「孤独」の3つのことが最も多いと言われています。今は元気でも不慮のけがや病によっていつ認知症になるか、いつ介護が必要となるかわかりません。大きなけがや施設入所などで蓄えていた預貯金があっという間に底をつくこともまれではありません。一人でお住まいの場合はなおのこと心配ですね。 まだ親御様の判断能力がしっかりとしている場合は、日常生活自立支援制度の利用や、あらかじめご自身が信頼できる後見人を選ぶ任意後見契約を結ぶことや、判断能力に低下が見られる場合は法定後見の制度を利用するといったように、相談内容に基づき、様々な制度の利用と併せて必要な支援は何か検討し、親御さんらしい暮らしと生活ができるようサポートを致します。 まずは一度、成年後見支援センターまたは最寄りのセンター会員にお気軽にご相談ください。
Q2「自分はしっかりしているから後見人はいらない」と頑として申請を拒否しています。このような場合も相談にのってくれるでしょうか。
認知症の方は自分の心身のどこが悪いのか、病的なのかということの自覚することが弱く、日常の生活の中で不自然な物忘れを繰り返し自分の生活に支障が出て家族や周りの人から注意されても「自分は問題ない、大丈夫」と言い切る方が多いのが現実です。 他の人からおかしいと思われたくない、その場の雰囲気を壊したくないなどと繕うことがあるともいわれています。認知症であってもその人らしさや心は生き生きと保たれているそうです。 元気だった頃の出来事を話題にするなどして相談に訪れたご本人の気持ちに共感しご本人の心に寄り添うことを大切にいちづけてお話いたします。何が何でも申し立てと結論を急がず、まずはご一緒に相談においでくださることがはじめの一歩ではないでしょうか。
Q3父は気むずかしいので、後見人との相性が心配です。後見人は裁判所が決めると聞きました。もし相性が合わなければ止めることはできるでしょうか。
成年後見制度を利用するかどうかは自由ですが、後見人が選任されたら、勝手にやめさせることや、後見人自身が辞任することはできないことになっています。制度を利用する本人を保護するという公益的な側面を考慮して、「成年後見人が自身の高齢や病気、遠くへの転勤等正当な理由があると認められ家庭裁判所が許可することが必要」となっています。
ですから、選任された後見人に対する好き・嫌いや、相性が合わないといった理由でやめることはできません。又、申し立てた後の審判前における申立の取り下げも自由にはできず「取り下げにも家庭裁判所の許可が必要」となっています。とても重要なことですから、しっかりと理解することが大切です。
Q4手続きは面倒でしょうか。
制度を利用するためには本人の住む地域を管轄とする家庭裁判所に申し立てをします。
申し立てができる人は本人、配偶者、4親等以内の親族、任意後見人や市町村長などです。
成年後見の申し立ては専門家に頼まなくてもできないことはありません。申立用紙の様式はそれほど難しくありません。しかし、利用区分の選択のことや諸手続、一緒に提出する書類を集める量が多いことなど一般の方にとってはかなりの負担になります。 制度を利用するためのお手伝いをしていますので成年後見支援センターまたは最寄りのセンター会員又にお気軽にご相談ください。
Q5手続きの流れはどのようになっているのでしょうか。
はじめの相談から必要書類の手配や準備を経て申し立てまでに1~3ヶ月ほど時間を要し、申し立てからは7割以上が2ヶ月以内、4ヶ月以内だと9割を超して後見人が選任され制度利用が開始となっています。審判から選任・開始までの期間はだんだんと短くなってきています。 相談から開始までの流れはどのようになっているのでしょうか。
1. 相談から申し立ての準備
① 関係者と相談・打合せ
② 本人と面接
③ 主治医などへ申し立て用の「診断書」の依頼
④ 関係者の戸籍謄本や「登記されていないことの証明書」などの収集
⑤ 年金収入や生活費、土地や建物などの財産調べ
⑥ 申し立て書類の作成・添付書類の整理(家庭裁判所の様式により)
2. 家庭裁判所に後見開始の申し立て
3. 家庭裁判所による審理
4. 家庭裁判所による審判
5. 後見開始
6. 後見登記
7. 年金事務所や金融機関に後見人の就任届
8. 家庭裁判所へ収支予算表や財産報告(1ヶ月以内)
Q6どのような人が後見人になるのでしょうか
特に資格はありません。家庭裁判所が本人の状況、家族との関係、財産の状況などを総合的に検討して、本人の尊厳を最も大切に考え、生活と財産を守るため最も適任と思う方を選任します。 申し立ての際に、後見人の候補者について希望を伝えることができます。しかし、本人が必要とする支援の内容によって、申し立ての時に挙げた候補者以外の方が選任される場合があります。複数の後見人を選任する場合があります。 又、申し立てをした後は家庭裁判所の許可がなければ取り下げることができません ※ 次の人はなることができません。
1.未成年者
2.家庭裁判所で成年後見人などを解任された人
3.破産者
4.本人に対し訴訟をしている、又はした人、その配偶者と直系の親族
5.行方の知れない人
Q7後見人はどのようなことをするのでしょうか。
本人の自己決定権を尊重する観点から、後見人の仕事をするにあたっては本人意思を尊重しておこなうことがなければなりません。 心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人に代わって衣食に関わること、住居の確保、介護保険給付をはじめ介護・福祉サービスの利用契約や、施設入所契約、預貯金の管理・払い戻し、不動産の売買・賃貸契約の締結・解除をはじめ重要な財産の処分、遺産分割の協議などを行います。 後見人の職務目的は、本人の財産の増加ではなく生活の維持と向上に本旨があるので本人の安定した生活を送り療養できるよう結ばれた契約がきちんと守り実行されているか確認する義務があります。 後見人はその仕事について家庭裁判所に報告するなどして家庭裁判所の監督を受けます。
Q8後見人などができないこと・してはいけないことはあるのでしょうか。
体に対する強制を伴う手術などの医療行為に対する同意や日用品購入の同意と取り消し、身元保証人や身元引受人、入院保証人などはできません。臓器移植の同意や尊厳死の同意なども後見人の権限には含まれていません。 施設の入退所の契約権限はありますが、実際の入所について本人の同意を前提としています。 住まいの変更、不動産の賃貸や売買、高額の支出などは事前に家庭裁判所に協議し了承を得てします。特に居住用の不動産は、家庭裁判所の許可を得ない処分行為は無効となってしまいますので注意が必要です。
Q9後見人がつくと、選挙権が亡くなるのでしょうか。
平成25年5月27日「成年被後見人の選挙権回復等のための公職選挙法等の一部改正する法律」が成立したことで、それまでは成年後見制度のうち「後見」が開始された場合に公職選挙法の規定により本人の選挙権は制限されていましたが、平成25年7月21日執行の参議院議員通常選挙から成年被後見人の方も、選挙権を行使して投票できるようになりました。 自分で候補者の氏名などを記入できない場合は、投票所で決められた補助者による代理投票が可能となりました。 保佐と補助制度を利用する方は元々選挙権の制限はされていませんので、これまでどおり投票することができます。
Q10後見制度支援信託制度について簡単に説明してください。
後見制度を利用する方が、日常生活で必要となるお金は預貯金などで後見人が管理し、それ以外の通常使用しない分のお金を信託銀行などに信託する仕組みになっています。 申し立てをしてから信託制度の締結までの流れは、①審判において家庭裁判所が後見制度支援信託の利用を検討するべきと判断した場合に専門職後見人が選任されます。(このときに親族後見人を併せて選任する場合もあります)②選任された専門職後見人は、本人の生活や財産の状況などを考慮して利用するべきどうか検討し、利用すべきと判断した場合は家庭裁判所に報告書を提出します。③家庭裁判所は、報告書を基に利用が適していると判断した場合は指示書を発行し、④後見人は指示書を信託銀行に提出し信託契約を結びます。 契約後において、一時金の交付や定期交付金額の変更、追加信託や解約が必要となった場合は家庭裁判所の指示書が必要となります。

任意後見制度

Q1どのような人が利用するといいのでしょうか
成年後見制度は、裁判所の手続により後見人等を選任してもらう法定後見制度と,当事者間の契約によって後見人を選ぶ任意後見制度に分かれます。 任意後見は、まだ判断能力が正常である人、又は衰えたとしてもその程度が軽く、自分で後見人を選ぶ能力を持っている人が利用する制度です。
Q2子供の障害があり、親である私が認知症になったときが不安です。自分に任意後見人をつけていると安心でしょうか。
まず、心配な子のために、然るべく遺言をしておいてあげることが、最低限必要と思われます。  次に、その子に契約締結能力がある場合には、子自らが委任契約及び任意後見契約を締結することが可能ですので、受任者に信頼できる適任の人を選ぶことができれば,安心できるのではないかと思います。  その子に契約締結能力がない場合には、同じく信頼できる人を見つけて、その人との間で、子が未成年であれば親が親権に基づいて、親が子を代理して任意後見契約を締結しておくことができると考えられます。また、その人と親自身との間で、親が死んだり体力が衰えたりした後の、その子の介護及び財産管理等について委任する契約をしておくことも考えられる方法のひとつです。
Q3夫が死亡し子供もいません。現在の生活全般と万が一の時に誰が始末してくれるのかが不安です。でも将来の貯えにも不安があり、任意後見制度利用に踏み切れません。どうしたらいいでしょう。
認知症に罹患しますと、自分では,自分の財産の管理ができなくなってしまいます。また、病院等で医師の診断・治療を受けようとしても、病院等と医療契約を締結することもできないし、入院のための契約締結もできないし、施設に入ってお世話を受けようとしても、施設に入るための施設入所契約自体ができなくなってしまいます。介護保険を利用したくても、その手続をすることも大変の上、何より介護を受けるための介護サービス提供契約を締結することができない、ということになってしまします。   すなわち、年をとってくると、たとえ、いくらお金を持っていても、自分のお金であって自分で使えない、自分で自分に関することが処理できないという事態が起き得るのです。そのようなことを防ぐため、自分の判断能力が低下した場合に備えて、あらかじめ、自分がもしそういう状態になったときに、自分に代わって、財産を管理してもらったり、必要な契約締結等を代理でしてもらうこと等を、自分の信頼できる人に頼んでおけば、すべてその人にしてもらえるわけで、あなたは安心して老後を迎えることができる、というわけです。    もちろん、任意後見契約を締結しても、それを使わないまま最後まで元気で大往生ができるかもしれません。そのときは、任意後見契約書の作成費用は無駄になってしまいますが、備えをしておくことは、とても大切です。
Q4法定後見制度が利用できるのであれば、わざわざ任意後見制度を利用する必要はないのではないでしょうか。
成年後見人等(成年後見人、保佐人及び補助人)と本人との関係(平成26年)は、 配偶者、親、子、兄弟姉妹及びその他親族が成年後見人等に選任されたものが全体の約35.0%(前年は約42.2%)に過ぎず、 親族以外の第三者(弁護士、司法書士、行政書士等)が成年後見人等に選任されたものは、全体の約65.0% (前年は約57.8%)であり、親族が成年後見人等に選任されたものを上回っています。 ちなみに、平成15年は、子、兄弟姉妹、配偶者、親、その他の親族が成年後見人等に選任されたものが全体の約83%(前年は約84%)を占めていました。 ですので、身内の方や信頼することのできる特定の方を後見人とするためには、法定後見制度を利用することでは難しく、これらの方と任意後見契約を締結することが必要であると言えます。

高齢者

Q1だんだん物忘れがひどくなってきて、日常生活に自信がありません。このような場合は成年後見制度を利用した方がいいでしょうか。
判断能力に問題のない方は、任意後見制度を利用してご自分の将来に対しての不安を解決することができます。
将来のことを任せる相手と任せたい内容を決め、公証役場で任意後見契約を締結します。ただし、任意後見契約は委任者である本人の判断能力が低下してからとなりますので、委任代理契約を同時に締結する移行型の任意後契約を利用するとよいでしょう。

任意後見契約は契約です。契約書に書いていない仕事はできません。あらかじめ、本人を代理して金融機関との取引・費用の支払い等を行う「財産管理」と介護契約・医療契約等を行う「身上監護」についてきちんと検討しておく必要があります。また、専門職が担当する場合には、月額の報酬を定める必要もあります。
Q2後見人は何でもしてくれるのですか
すべてをすることはできません。法定後見制度による成年後見人、任意後見制度の任意後見人はともに、保証人になることはできません。

成年後見人は、「財産管理」と「身上監護」についての事務を本人に代わってするのが役割だからです。また、食事介助や清掃、送迎、病院への付き添い等の事実行為も後見人は行うことはできません。

障がいのある方

Q1身体障害があり生活が大変です。後見制度を利用した方がいいでしょうか。
裁判所に申立てる法定後見制度は、身体に障害があるだけでは利用できません。判断能力は低下していないが、今からでもすぐに手助けを求めたい場合は任意後見契約移行型が適しています。任意後見契約とともに、今からすぐに行ってもらいたい事務を委任する事務委任契約を一緒に結んでおくものです。
Q2お金の管理が難しく、つい生活費が足りなくなります。たまに携帯電話を止められることもありました。精神科を受診していますが、後見制度を利用できますか。
認知症、知的障がい、精神障がいなどにより物事を判断する能力が十分でない場合、裁判所に申立てる法定後見制度を利用することができます。裁判所が選任した後見人等にお金の管理をしてもらったり、生活面での契約などを代わりに行ってもらえます。成年後見制度を利用する前に、社会福祉協議議会の日常生活自立支援事業の利用を検討してみることも大切です。
Q3発達障害があります。対人関係が難しく後見人との良好な関係を築くのによい方法はありますか。
後見制度利用がスタートしたからと言って、当初から良好な信頼関係が築けるとは限りません。後見人等にも障がいの内容について学んでもらい、お互いの信頼関係構築が大切です。
Q4ケンカなどのトラブルがよくあります。軽度の知的障害がありますが、後見制度を利用した方がいいでしょうか。
後見人等は、ケンカなどの事実行為には対応しません。トラブルの未然防止のために、後見制度を利用し、トラブルの原因となる契約などを代理してもらうこともできます。障がいの程度により、保佐、補助制度も利用できます。

費用・報酬

Q1 費用はどれくらいかかりますか。また誰が支払うのでしょうか。
法定後見等の場合、費用は申立にかかる実費(収入印紙・切手代等)と申立代理人等の報酬となります。

申立には申立手数料(収入印紙)800円、家庭裁判所の指定する金額の切手(札幌家庭裁判所で後見開始の場合3,180円)、登記用収入印紙2,600円を合計した6,580円(H28.11.14現在)となります。申立の種類によって金額は変わりますが概ね1万円以内に収まるようです。(使用しなかった切手は返還されます。)
この他、申立用の診断書作成にかかる手数料(医療機関への支払い)として概ね5千円程度必要です。
また、鑑定が必要な場合は、鑑定料として5万円程度の費用負担を求められます。
申立代理人等の報酬とは弁護士・司法書士等に申立書の作成や手続を依頼した場合の報酬です。各事務所により報酬基準が公開されておりますのでそちらをご覧ください。
実費には交通費や通信費も含まれます。

費用の支払いについては、原則として申立人の負担となります。

任意後見契約の場合、公正証書作成手数料として最低1万1千円から、その他に印紙として4,000円、郵送費用等が公証役場にて必要になります。またこの他に実費として交通費や、報酬等が必要になることがあります。 その後、任意後見監督人選任申立をする時は、収入印紙等実費が必要になります。
Q2後見人への報酬はいくらくらいを目途に考えておけばいいでしょうか。
後見人等への報酬は法定後見等の場合、家庭裁判所の審判によって決定されます。
財産額や職務の内容により変動しますので一概にいくらとは言えませんが、年間10万円〜40万円程度で幅があります。

任意後見の場合は、あらかじめ結んだ任意後見契約の報酬額となります。月額1万円〜3万円程度が多いようです。
Q3申立費用が用意できません。本人の預金から支払ってもいいのでしょうか。
本人の預金から勝手に支出することはできません。

ただし「特別の事情」がある場合は、家庭裁判所に、申立人以外の「利害関係人」に申立費用の負担をさせることを求めることができます。この費用負担命令によって、本人の負担とすることができます。
この場合、費用を立替えた上で本人の財産から返還してもらう形となることが多いようです。
Q4後見人への報酬支払いができなくなったら、どうなるのでしょうか。
後見人等の職務は報酬の有無で終了するものではありません。 もし本人の財産が無くなりそうな場合には、生活保護等の申請をし、本人が生活できるよう環境を整えることも職務のうちです。その職務を行なった上で、家庭裁判所の審判によって決定された報酬額が本人の財産から支払われることとなります。親族や関係者に支払いを求めることはありません。

任意後見の場合はケースバイケースですが、法定後見へ移行して契約を終了するか、正当な理由があるときは家庭裁判所の許可を得た上で契約の解除をすることができます。

参考:申立印紙・切手について(札幌家庭裁判所)

http://www.courts.go.jp/sapporo/vcms_lf/itiranhyou20161114.pdf